[幽霊遭遇] 1990年 気持ちのよい挨拶

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あれは、18歳か19歳の頃。平成2年頃

その頃の私は、福岡・西新にあったデパートの地下1Fにあるお店で働いていた。


店の作りは次の通り


 
・扉Aは、高さが腰までしか無い扉で、開け閉め時に「ギギギッ」というかなり大きな音を立てる。
(古い西部劇のバーの入り口扉の半分が、腰のあたりの高さにある。とイメージしてください。)

・扉Bは、窓なしの扉、中を見ることは出来ない。
・場所によっては、扉A・バックヤード付近は全く見えない


午前9時~9時半の出来事。


パートさんが出勤してきた

私は、バックヤードから一番遠い位置で作業をしていた。


扉Aを開く音と共に
「Tさん、おはようございまーす!」との元気な若い女性の声で挨拶をされた。

「ほい、おはようー」
しゃがみこんで作業をしていたので、顔を向ける事もなく返事をした。


パートさんが出勤してきた

扉Aを開く音と共に
「Tさん、おはようございまーす!」との挨拶をされた。

「ほい、おはようー」

返事をしたものの、少しの違和感はあった。
とにかく小さな店なので、日曜日でも無い限り 朝のシフトを3人で廻す事は無いハズだ。

扉Aが、まだ ギッギッと小さな音を立てて揺れる音が聞こえた。


この時はまだ、怪異という考えに至らず
「誰だろう?」程度で、作業の手を止める事は無かった。

たまにシフトでは無い子が、待ち合わせの時間つぶしに
店に遊びに来る事はあったからだ。


パートさんが出勤してきた
また、同じ挨拶をされた。


今度は完全に判った。こいつは人では無い。
まだ、誰もバックヤードから出てきていない。

バックヤードには3人なんてとても入れない。
二人でもぎゅうぎゅう詰めの広さしか無い。

私は立ち上がり、フロントのL字の角へ立った。

扉Aは、間違いなく誰かがそこを通った事を示す
「ギッ・ギッ」と音を立て、小さな反復運動を繰り返している。

誰かがバックヤードから出てくる事を待った。


名前を呼ばれた

どれくらい待ったのだろう。

「Tさんー、すいませんちょっとー」
バックヤードから呼ばれた。

やはり誰かが来ていたのだ。
私は内心ホットした。


「何? 開けるよ」
私は、全くの無警戒でバックヤードのドアを開けた。

そこには、誰も居ず、電灯すら付いていない、狭い空間しか無かった。



後日談

私が働くお店に隣接して、焼きそば+回転饅頭屋さんがあった。
そこで働く同年代の女性に、この件を話した。

すると彼女は、面白そうに、また、嬉しそうに笑いながら

「あー。ソレ、そっちに遊びに行くこともあるんですね!」

実にあっけらかんとした返事をした。

それから親しくなった、この女性とは、いろいろな心霊スポットをめぐり
一度、とても怖い目に合うのだが、それはまた別の話。



所感

この怪異は、この後も何度かあったが
一度も実害もなく、隣の店にも出るとの事だったので

最後の方では、「霊子ちゃん」という愛称をつけ、普通に朝の挨拶を返していた。
慣れというのは恐ろしいものだ。



※1) この出来事の正確な日付を記憶していない為、その店で働いた期間の初めあたりとした。
注意書き:
可能な限り記憶に忠実に記述しています。
しかし、公開するものであること・記憶の劣化に伴う次の事柄をご了承ください。
(1) 記録であるため、「物語的な結末」は期待できません。
(2) 記事中の写真・地名・人名・店名など、全ての名称は実際のものとは完全に変えてあります。
(3) 人との会話は正確に覚えていない事が多く、その殆どは「こんな感じの会話」です。
(4) 日付を覚えていないことが殆どですので、記録の日付は適等です。
(5) (?)マークの付いた表現は記憶が曖昧であることを意味します。

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